素晴らしいレコードジャケットの世界[後編](Sir Y.O.K.O PoLoGod.+Kuma the Sureshot)

レコードジャケット談義、JAZZ~FUNK、Rare groove、和モノ、電子音楽・・・様々なジャンルのレコードジャケットの話となった前編に引き続き、お互いのルーツでもあるHIPHOPの話はもちろん、秀逸なアートワークを手掛けた人気デザイナーやイラストレーターの話が中心になりました。最後まで読んで損は無い内容となっているはず!?それでは後半戦 Letsgoooo!!

 

[後編]

Y:前半はちょっとマニアックな話に展開しましたけど、後半は定番「Marvin Gaye - I Want You」からいきますか。説明不要なソウルの名盤中の名盤ですね。


K:これってCurtis MayfieldのSometing To Believe inでも描いてるイラストレーターErnie Barnes氏のアートワークだよね?


Y : そうですね。めっちゃインパクトありますよね。筋肉の筋なんかも凄い表現力で躍動感がすごい。


K:HIPHOPから聴き始めても、サンプリングソースを追ったりして色々と他のジャンル聴く様になると思うんですけど、それでソウルを聴こうってなったらやっぱり最初に手にする様なそんな入門であり避けられない盤だと思うんですよね。


Y : 人生の半分以上はレコード買ってきて当然マニアックなレア盤を探してきたわけですけど正直言うと、、、やっぱ定番やばいです(笑) 何を言ってるんだと思われるかもしれないけどちょっとすっ飛ばしてきたとこもあって意外にもここ最近は定番アーティストの名盤をじっくり聴くようになってきたんですよね。しかも国内盤で探してます。帯があればなお良しですが状態が良いのが多いし、音が今聴くのにちょうど良いんですよね。ビートメイク目線で言うと日本盤の方がやっぱり抜けがいいですよね。昔はUSのまとまった音が良く感じてたけどサンプリング的にはもうちょっと上がスッキリと綺麗に出ているのがいいかなと思いながらね。今の作り方で考えたら日本盤の処理の方が向いてるのかなと思いますね。


K : それもちょっとありますね。国内プレスのクリアさが前は苦手だったけど今すごい国内盤良いなと僕も思います。


Y : US盤の音の塊の様なサウンドがすごい好きだったんだけどプレスによって音が違うんだよなぁとなった瞬間から、日本盤やっぱり耳馴みよくてそこから意識する様になったかな。


K : 確かに。盤の状態が綺麗なものが多いっていうのもあるし、日本語の解説や翻訳が入っていて違う楽しみ方もありますよね。


Y : スティーヴィー・ワンダーマービン・ゲイとかボブ・マーリーなどのレジェンダリーな70年代の作品は改めて帯付きで買いなおしたりするのが普通になってきてますよ。


K : それは着実にきてるし、こうやって飾ると帯も含めまた素晴らしさを再確認出来ますね。その繋がりで、次は「Camp Lo / Uptown Saturday Night」です。アートワークのサンプリングという分類になるんでしょうが、現代風にちょっとアップデートされてますね。内容も70年代のソウルのサンプリングが多くて洗練された90年代HipHopの大名盤。 



Y : 中でも有名な名曲「Black Nostaljack」は先ほども出たカーティス・メイフィールドの楽曲をサンプリングしてますが、当時は結構衝撃的だった感じがする。直球な使い方ですが替え歌さながらのソウルフルなラップが印象的でした。

で、次はこちら。「ONECUT-GRAND THEFT AUDIO」

Y : やっぱりね、近代アーティストのアートワークと言えば代表的なとこで言うとBANKSYってことで挙げさせてもらいました。本当の意味でアートとして価値の高いこの辺は飾る意味では本流になりますよ。きっと。


K : 先日の恵比寿のトーキョー・レコード・マーケットでSSSボックスを展示させてもらいまして、その際にBEAT BOPってバスキアのアートワークで有名なOLD SCHOOL RAPのレコードを見本として飾ってましたが、やっぱりお客さんからレコード自体が売り物か問い合わせありましたね。笑

次は「DJ KRUSH先生のStrictly Turntablized」。1995年にリリースされた完璧な2ndアルバムですね。FUTURA2000がアートワークを手掛けてて近代アーティスト作品つなぎですね。



Y : かっこいい(笑) 世代感もありますが、いわゆるMo’WaxをはじめとするHeadzムーブメントの基礎中の基礎盤ですよ。DJ Shadowと並んでほんとにかっこいいアルバムです。この2nd、これはやばすぎる。。これは手放してしまったから買いなおしたいなぁ。アートワークが完璧過ぎますよ。


次は90’s ヒップホップの名盤 「The Pharcyde - Bizzare rideⅡ The Phacyde」ですね。ニュースクールのカラフルな部分が随所に散りばめられていてパーティーチューンがほとんどで、ハズレなしみたいなアルバムってよく言われるじゃないですか?その代表作。ほんとスキップする曲がない。

K : これはアパレルブランドのFUCTのデザイナーErik Brunettiによるものですね。おもちゃ箱をひっくり返したような内容って言う表現をよく当時されてたけど、なんか今改めてジャケット誰がやったかを見てもまさにその通り作品ですよね。このファーサイドのアルバムってCDだと見開きになって全体が見れる様になっていて原画の一部を切り取ったデザインになってるの面白い。


Y : そうですよね。ヒップホップのアルバムだけでは無いのかもしれませんがカセットテープとかも見開きを開くと実は延長があるみたいなものを稀に見ますね。これはMOUSOU PAGERのアルバムでもやりたかったことのひとつだったけどここまでできなかった。次回ですね(笑)


K : 次作でやりましょう!次は「スチャダラパーの3rdアルバムのWild Fancy Alliance」のピクチャー盤。

これもファーサイド同様にCDだと見開きになっていて、という構造。ファーサイドとスチャダラパー、リリースのタイミングは半年位しか違ってなくて、ほぼ同時にこんなかっこいい発想になってるのとても興味深いですね。しりあがり寿先生の絵ですね。めちゃくちゃカッコいい。来年はリリース30周年ですよね。何か企画はあるんでしょうかね? これは僕のちょっと譲れない持論ですが、日本語ラップ初の完璧なクラシックアルバムだと。アートワークも含めて。ご本人たちにアピールしたいのは、、、30周年ってことで、このアートワークのTシャツとかと、ジャケット付のLPを是非作っていただきたい(笑)

Y : これを見た関係者なりメンバーの方が気が付いたら是非作ってください(笑)

 

 そろそろ近年もののレコードでも紹介しますかね。


K : 今でも現行、ニューリリース、その辺の情報に詳しい横尾くんに聞きたかったのですが、新譜のレコードはサブスクに遅れる形で半年、1年とか後にリリースされる現状は変わり無い感じ?


Y : 現時点だと世界情勢の変動がプレスの遅れにも影響があって、なかなか予定通りいかない状況が続いていて入稿から1年以上かかる様なケースも増えているので早めにレコード化に向けて動けていないアーティストは2年先なんてのも今後はあると思う。もはやコレクションとしての価値が優先されているのでリリースがあるだけでありがたいし、所有できるだけで満足する場合が増えてきました。音楽配信サービス聴いて内容を知ってるし、もちろんデータでDJプレイできるんだけどやっぱりレコードは出れば買ってしまいますね〜

で、「Westside Gunn-Pray for Paris」です。


K :このWestside Gunnのレコードは通常流通してないレコードですよね。入手経路は?

Y : このレコードはDAUPE!ってUKのレーベルからリリースされていて、しかもBandcamp内のレーベルサイトでしか販売してないのでそこで購入してます。このレーベルのタイトルは日本語の帯付きやマーブル盤などもあったりしてカラーもいろんなプレスがあったりがするんですけど帯付きは20枚のみのリリースだったりしてそれを買うのは世界でよーいドンのスタートになるのでマジで売り切れ5秒以内でほぼ入手不可能です。


K : 横尾くんがtwitterで言ってる「#DAUPEチャレンジ」ってやつね(笑)


Y : そうです(笑) 本当に凄いんですよ。ALCHEMISTのサイトなんかもそうですけど5分以内に1000枚くらい売り切っちゃうんですよ。MACH HOMMYの2020年のアルバムなんて5000枚くらい15分で売り切ってました(笑)さらに販売価格5000円位のレコードを購入した瞬間にプレ値。ものにも寄るけど3〜30倍位になるんですから凄い。


K : そのチャレンジで帯付きは買えたことはあるんですか?


Y : DAUPE!の帯付きは買えた事は無いです。スプラッター(マーブル盤)ですら買えた事ないと思う。絶対無理(笑)


K : なるほど。。凄い世界ですね。。


Y : このタイトルについてはWestside Gunnのメジャーお披露目を記念したアルバムで客演も豪華で衝撃的な描写のアートワークになりますがOFF WHITEの創設者であり、最近お亡くなりになられたVirgil Ablohが手掛けているのでアート価値も高い。この辺のいわゆるGriselda系のアンダーグラウンド系譜は絵画の様な絵が多くなってきてるので飾る感覚で言えばSSSボックスとの相性もいいですね。


K : DAUPE!のジャケットは一捻りしてて良いですね。ショッキングな描写のものとかアーティストの写真をアブストラクトな処理をしてたりとかアングルも良くて面白い。僕はVIC SPENCERのジャケット好きです。

で、これで最後になりますが「MUROさんのDiggin’ For The Beats」です。



Y : おおっ!かっこいい〜 ベストマッチなのきましたね(笑)


K : (笑) レコードジャケットにレコード自体が写ってる作品は昔から心をくすぐられるというかレコードコレクションへの想像力を掻き立てられるので大好きです。写真は日本のヒップホップには欠かせないCherry Chill Willさん。素晴らしいです。


Y : DJ SHADOWなんかもレコード屋とかDig風景のシーンが多くてグッときますよね。


K : そうそう。MUROさんとかDJ SHADOWはレベルが違いますがその代表例かもしれない。このMUROさんの作品もアルバム単位でサンプリングビート集を出すって言うとこに対しての気合が凄い漲ってるのが分かりますよね。このレコードをSSSボックスに飾ってチラッと見ては気合を入れてビートを作ったりしています。


Y : (笑) 確かにリラックスタイムやムーディーな夜(笑)やシーズン、シーンなど気分に合わせて飾るのも良いですよね。

 

 

Y : まぁ結果的にちょっと長くなってしまいましたが、このインタビューシリーズって僕がナビゲートしながら数回続くことを計画していて、これから色んなゲストの方の様々な話が出てくると思うと楽しみですし、皆様も楽しみにしていてもらえたらと思います。


K : そうですね。こういうことって言うか、我々なんかはレコードに触れることをいろいろ考えるにあたってやっぱりMUROさんの影響がありますからね。MUROさんの様なディガーの方々にもお話聞けたら良いですね。


Y : 色々と紹介してきたけど、古いものから新しいものまでそれぞれ自分が気に入ってるとか気にしてるものを飾るだけでも全然やっぱ自分の気分もモチベーションも違いますね。


K : そうなんですよね〜 誰がアートワークだとか写真は誰が撮ったとかそういうクレジットをインサートで調べながらアルバムを聴くのも楽しみの1つですし新たな発見がある。データではそこまで行き届かないとこだったり視点が届かなかったりするところがあるので、改めてレコードをクレジット見ながら聴くのも面白いですね。


Y : 何よりも思ったのは今回みたいに友達同士で2人じゃなくても3人、4人でレコードとかを紹介、自慢しあったりしてレコードに針を落として語り合うのにも最適ですね。


K : うん。今日は手探りで始めたけど、何か懐かしい感じもあったし、お互いに新しい発見を生み出す機会としても良かったなぁ。


Y : その他の提案としてLPサイズの台紙があれば音楽系のパンフレットとか古い雑誌だったりとか英字の新聞誌入れたり自分のお気に入りのアートを飾ったりとかまた様々な用途があると思います。レコードに限らなくても工夫しても楽しめる家具だなぁと改めて思う。

 

K:今日はレア盤から安く購入できるレコードまで広く紹介しましたが、レコード屋さんやリサイクルショップ、フリーマーケットに行って楽しみながら探して買う、それを飾ってみる、みたいな楽しみ方のきっかけになればなぁと思っています。

 

Y : そうですね〜そこは是非です(笑) 最初にも言ったけどレコードマーケットでも300円レコードの中から好きなジャケだけ、内容わからなくても買って飾ってみるなんていうのも全然できると思う。レコードの良いところは100円くらいから買えるとこなんで(笑)


K : そうですね(笑) 初回はこんなところですかね。今後はこういう感じでいろいろレコードにまつわるゲストの方々にレコードを選んで頂いて楽しいお話できたらいいですね。


Y : ゲストの方はそもそもレコード専門の方が中心だったりするから同内容のインタビュー受けている方もいらっしゃると思うし、どこかで話したことも重複してくると思いますが、レコードのボリュームを取りつつ、リビングや家具のこだわりも聞いていくつもりでほんの少しプレイベートでパーソナルな部分を探っていけたらと思います。


K  : 横尾くんもSSS BOXを是非末長く使ってやってください。今日はありがとうございました。


Y : もちろんです。レコードとは一生の付き合いになりそうなので(笑)

 

(文責:横尾 秀俊)

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